「戦後80年」の意味と「日中不再戦・平和」活動について

 今年は「戦後80年」の節目の年です。日中友好に携わる私たちとしては、日本(と中国)にとっての「戦後」の意味、つまり如何なる戦争の終結後なのか、という点を、改めて確認しておく必要があるでしょう。戦争の地域に従えば、「アジア戦争=対中国戦争(中国から見れば抗日戦争)」と「太平洋戦争=対米英蘭戦争(ABCD包囲網から中国を除く)」の両面を備えた(ただし史的因果関係でいえば、「アジア戦争」が「太平洋戦争」を導いた)、「アジア太平洋戦争」であることは間違いありません。

 また、戦争の性格をめぐっては、世界的には「ファシズム(国)対反ファシズム(国)の戦争と見なされていますが、同時に「植民地保有国対非植民地保有国」(植民地拡大に向けた覇権争奪)の戦争でもありました。そして断るまでもなく、日本は、「ファシズム国」「植民地保有国」として戦争を引き起こした側であり、それ故に結局は敗戦を喫します。一方、中国は「ファシズム国」の中で唯一、植民地を有さない「非植民地保有国」でありながら日本による早期からの侵略を受け、全国土を帝国日本に蹂躙されています。しかし、強力な抗戦能力を発揮して戦勝(「惨勝」とも呼ばれましたが)したのでした。以上より、戦後、日本は、中国(そしてアジア)との戦争に敗北したとする認識を胸に刻むことで侵略戦争の犯罪性を自覚し、二度と戦争は行わないと誓う日本国憲法を生み出したのでした。また中国は、客観的には戦勝国の中で唯一、ファシズムにも植民地主義にも抵抗し、反ファシズムと脱植民地主義・反覇権主義の姿勢を保持した国家としての姿を示すことになりました。(以上、抗日戦争の意義などについては、纐纈厚「日中戦争と中国の抗日戦争の位置」、『研究中国』第20号、2025年4月、を参照。)

 しかし、戦後、冷戦体制が進展する中で、日本政府は、「アジア戦争」ではなく「太平洋戦争」に敗北したとのみ考える傾向が強まり、政治・経済・軍事の各方面におけるアメリカとの一体化(従属化)を強める道をたどりました。また、中国も、冷戦構造や文革その他、種々の国際情勢と国内事情もあって、残念ながら、反ファシズム・反覇権という崇高な姿勢を貫き続けることはできずにいたというのが実情でしょう。

 ですが、昨今、「アメリカ・ファースト」を掲げ強引な政策を推し進めるトランプ大統領の影響力が強まる中で、中国は、地域の諸課題についての自らの立場を表明し、「積極外交」で存在感」を増しつつあるのも確かです。今後、いわゆる「グローバルサウス」をも代表する存在として、平和と安定、民主主義に関わって、積極的な役割を果たすことを期待するとともに、それへ向けた私たちの働きかけを強めて郁子とが重要になっています。

 「日中不再戦」を創立の合言葉としている日中友好協会が、その原点に立ち返って、憲法9錠を守り発展させる活動を強めながら、中国との間で批判も含めた草の根からの対話に基づく交流を深めながら、東アジアの平和と安定に向けた協力・共同を深めていくことが、「戦後80年」を迎える今日における、最大の課題と目標になっていると言えるでしょう。 (続く)